導入事例

コーエーテクモの"覇道"を支えるAWS活用術  〜新旧テクノロジーを適材適所に〜

株式会社コーエーテクモゲームス導入事例

お話を伺った方

専務執行役員 エンタテインメント事業部長 伊藤 幸紀 様

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お客様の課題
  • ・プレイヤー数の増加にともない「ワールド」ごとの独立構成が増え、環境の分散管理が難しくなり、運用負荷とコストが増大していた
  • ・EC2を中心とした密結合構成のため、アップデートや障害対応に時間を要し、シーズン制イベントへの迅速な対応が難しかった
  • ・海外プレイヤーの増加により、多言語間でのコミュニケーションへの対応が必要となり、グローバルなユーザー体験を実現する仕組みが求められていた
課題解決の効果
  • ・NHN テコラスの支援のもと、共通処理の集約とDB統合を実施。Aurora、Valkey、Gravitonなどの AWS テクノロジーを導入、運用コストを約30%削減、パフォーマンスを約20%向上させた
  • ・EventBridge+Lambdaによるサーバーレス化とワールド仮想化で疎結合を実現。可用性の向上と迅速な更新を両立した
  • ・Amazon Bedrockを活用した生成AI翻訳を導入。日本語・繁体字混合サーバーをリリースし、言語の壁を越えたプレイヤー交流を促進することができた

株式会社コーエーテクモゲームスは、世界中のファンを魅了する数々のヒット作を生み出してきた総合エンタテインメント企業です。
なかでも「シブサワ・コウ」ブランドは、戦略・歴史シミュレーション分野の代名詞として知られています。長年培ってきた設計思想と技術を融合し、時代に即した新しい遊び方を創り出すことを使命としてきました。

2020年に配信を開始したスマートフォン向けオンラインタイトル『三國志 覇道』は、同ブランドとして初めてAWSを本格採用した大型モバイルゲームです。数千人単位のプレイヤーが同一マップ上で戦略を競い、リアルタイムで部隊が動き続けるダイナミズムこそが本作の最大の特徴となっています。

本作のリリースから数年が経ち、運営・アップデートを重ねる中で、クラウドインフラのあり方も大きな転換点を迎えていました。

課題 — ワールド乱立によるリソース分散と密結合構成

リリース当初、『覇道』のインフラは「安定性」を最優先に設計されていました。プレイヤーが参加する「ワールド」を単位として、EC2上に個別環境を構築し、それぞれが独立したサーバーとデータベースを持つ構成です。

この構成は、障害影響を限定できるという利点を持ちながらも、タイトルの成長とともに次第に限界を迎えました。リリースからの時間経過と共にワールドが増え、構成管理の煩雑化やデプロイ時間の延伸が発生。運用負荷とコストが上昇し、安定性の裏で俊敏な改善が難しくなるというジレンマが生じました。

さらに、繁体字圏を中心とする海外ユーザー層が拡大し、日本語との多言語対応が急務に。同社 専務執行役員 エンタテインメント事業部長 伊藤幸紀様は当時を振り返ります。

「安定性を重視するサービスに、クラウドならではの柔軟性を活用してシステムを進化することが重要だと感じました」

NHN テコラスとの協業

課題解決に向け、同社はAWSパートナーであるNHN テコラスに相談。クラウドインフラの再構築プロジェクトが始まりました。

「実績ある堅牢な基盤と最新技術を融合させ、複雑な要件を『使いやすい形』に実装する」という共通の設計思想のもと、NHN テコラスは、アセスメントを通じて既存構成の課題を可視化し、短期的な安定運用と長期的なモダナイゼーションを両立する設計方針を提示しました。

ソリューション — 共通化・最適化・疎結合化の三位一体アプローチ

① 共通処理の集約とDB統合によるスリム化

まず、ワールド単位に重複していた共通処理を集約し、複数のDBサーバーを統合しました。併せて、一部でボトルネックとなっていた I/O 負荷を軽減し、スケーリング時の柔軟性を確保しました。
これにより、メンテナンス作業が簡略化し、ワールド追加・削除のコストの削減に成功。運営リソースの最適化を実現しました。

コーエーテクモゲームス様_構成図

② マネージドサービスとGraviton世代への移行

安定運用を維持しながら、パフォーマンス最適化を目的にAWSのテクノロジーを導入。

  • Amazon Aurora のバージョンアップとパラメータチューニング
  • ElastiCache for Redis → ElastiCache for Valkey への移行
  • R5 → R6g(Graviton) 世代へのリフト

これらの最適化により、処理性能は約20%向上、リソース利用率も改善。結果として、運用コスト約30%削減を実現しました。

③ 疎結合化とワールド仮想化(Pod化)

従来のEC2密結合構成を解体し、Amazon EventBridge + AWS Lambda によるイベント駆動アーキテクチャを採用。サーバーからのクライアントへの通知処理をPub/Subモデルで処理し、通信の疎結合を実現しました。

さらに、ワールド単位の環境を論理的な「Pod」として仮想化し、デプロイやスケール操作をコード化。この仕組みにより、可用性の向上と更新作業の迅速化が達成されました。

生成AIによる新たな価値創出 — Amazon Bedrock の導入

インフラ刷新後、同社が次に着手したのは生成AIの活用です。
『覇道』では、日本語と繁体字のユーザーが同一ワールドで交流する「混合サーバー」の構想が進んでいました。課題は、チャットや連絡文面における文脈を理解した翻訳です。

この要件に応えるため、同社はAmazon Bedrock 上で稼働するClaude 3 Haikuを採用。リアルタイムにチャット内容を解析し、短文・省略語・文脈依存の表現にも対応する高精度翻訳モデルを実装しました。

2024年12月、混合サーバーが正式リリースされ、繁体字圏と日本のプレイヤーが一つのワールドで自然に交流できる環境が整いました。

「生成AIがプレイヤー同士の言葉の橋渡し役を果たし、国境を越えた協力や競争を生み出しています」(伊藤様)

翻訳精度は社内検証値で約95%一致という水準を達成し、ユーザーアンケートでも「違和感がない」「意思疎通がスムーズになった」という評価が多数寄せられています。

成果と効果(社内検証値より)

項目 導入前 導入後 効果 備考
運用コスト 100% 約70% 約30%削減 共通化とGraviton移行による
パフォーマンス 基準値 +20% 20%向上 Graviton移行による
デプロイ時間 100% 約25% 約75%短縮 Pod化と疎結合化による
翻訳精度 約95%一致 コミュニケーション改善 生成AI(Claude 3)導入

出典:社内検証/監視値・お客様ご提供資料

これらの結果は、クラウドモダナイゼーションが単なるコスト最適化にとどまらず、ゲーム体験そのものを進化させる投資であることを示しています。

今後の展望 — モダナイゼーションから継続的最適化へ

今回の刷新で得られた知見は、新規タイトル開発にも応用可能なアーキテクチャ設計指針として共有されています。
NHN テコラスは今後も、アセスメント・最適化・FinOps・AI導入支援といった多面的なサービスを通じて、同社のクラウド活用を継続的に支援していく方針です。

伊藤様は最後にこう語ります。

「クラウドの力で、ゲーム開発も運営も“進化を続ける仕組み”に変わりました。NHN テコラスは、単純な業務委託ではなく当社の FUTURE TECH BASE を通じて各ブランドに安定と革新を両立した環境を整えるチームに加わっており、また次の挑戦に踏み出す準備が出来ていると考えています」

まとめ

『覇道』シリーズへの取り組みは、クラウドと生成AIの融合によってゲーム運営の新境地を切り拓いた好例です。

NHN テコラスは、オンラインゲーム運用の「安定」と「進化」を両立するクラウド基盤の再設計を支援。その一方で、コーエーテクモゲームス様は生成AIによる新たな挑戦を自社主導で展開しました。

枯れた技術で実績と信頼性を確保しながらも、新しいテクノロジーによる革新の挑戦を恐れない — が両社の取り組みの根底に流れており、“知る”から“活かす”へと進化したクラウド活用が、エンタテインメント業界における新たなモデルケースとなっています。

公開日:2026年3月17日

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株式会社コーエーテクモゲームスについて

歴史シミュレーションゲーム「信長の野望」や「三國志」、アクションゲーム「無双」シリーズなど、数々のヒット作を創造・展開する総合エンタテインメント企業です。パソコンや家庭用ゲームソフト、オンラインゲーム、スマートフォンゲームなど、様々なプラットフォームを通じて世界中のファンにゲームコンテンツを提供しています。

ゲーム、イベント、グッズなど、最新情報はこちら:コーエーテクモゲームス 公式サイト

社名
株式会社コーエーテクモゲームス
内容
パーソナルコンピュータ・家庭用ビデオゲーム機用ソフトウェアの企画・開発・販売
オンラインゲーム・モバイルコンテンツの企画・開発・運営 イベントの企画・運営
設立
1978年7月

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