AIをフル活用し、新聞配達店の窓口対応をチャットボットにより無人化 感情分析に基づいた緊急度自動判定も可能に
オルタナティブ導入事例お話を伺った方
代表 谷藤 亮子 様
インターン生 古野 拳進 様(北海学園大学 経営学部 3年)

- お客様の課題
-
- ・顧客企業である新聞配達店のコンタクトセンターの業務をAmazon ConnectとAmazon Lexにより構築したチャットボットで自動化する構想をもっていたが、AWS関連の知見に不安があり、支援パートナーを探していた
- ・コンタクトセンターで受け付けたデータの処理には生成AIを活用する方針だったが、データの整形・加工の精度をあげるためには細かな設定必要となるため、専門的なアドバイスが必要だった
- 課題解決の効果
-
- ・NHN テコラスの技術支援により、開発期間をおよそ1ヶ月短縮できた
- ・データの整形や回答・通知結果の精度を上げるためのチューニングでは、的確なアドバイスを受けることができ、システムの品質向上を実現した
- ・コンタクトセンターでは、有人での対応から無人の対応が可能になったため、人件費を含めたTCOはおよそ35%削減でき、顧客対応のオペレーション効率化にもつながった
北海道札幌市を拠点に、IT顧問、システム開発、人材・研修の領域からIT活用やDX支援を展開するオルタナティブは、AWSのサービスを活用したシステム構築と業務効率化の実現を通じて、企業の成長実現に取り組んでいます。
今回、同社では顧客企業が経営する新聞配達店向けに、従来は電話で受け付けていた購読者からの問い合わせを、コンタクトセンターのチャットボットで自動応対するシステムを構築しました。プロジェクトには同社での就業を通じて初めてAWSのサービスにふれたというインターン生も参加して、機能の追加や検証作業を行いました。
このプロジェクトでNHN テコラスは、エンジニアのAWSに関する知見を活かし、Amazon Connectの導入と生成AI活用について、技術的な支援を提供しています。
代表の谷藤様と、インターン生の古野様にお話をお聞かせいただきました。
はじめにオルタナティブ様について、立ち上げの経緯や事業の内容をお聞かせください
「もともとエンジニアをしており、一般企業の情報システム部門で10年ほど開発の責任者として従事していました。その後、ITベンチャーの代表職を経て、現在のオルタナティブを立ち上げました。長年IT業界に携わってきた中で感じていた課題は、超上流工程(方向性やトップの思い)で間違いや理解の不足が発生すると、下流の開発工程では修正が利かないということです。これを解決するためには上流の工程から入って、人材育成や評価まで含めた改善が必要だと思い、社長として事業を起こしました。
エンジニアの無駄な稼働を抑制し、開発をゴールにしないコンサルティングをモットーとした業務支援に取り組み、開発現場のリテラシー向上を目的とした研修も行っています。最近のトピックとしては、業種を問わず適用できる社内ポータルサイトのセミパッケージ化を企画・準備中している他、自社オリジナルのサービス企画も進めているところです」(谷藤様)
今回NHN テコラスに支援をご依頼いただいた案件についてお聞かせください
「もともと当社がIT活用や事業コンサルティングの支援を提供していた、新聞販売店を経営するお客様からのご相談がきっかけでした。ご存知のように、新聞販売の業界ではデジタル化やメディア接触環境の多様化によって、紙媒体の購読数は減少傾向にあり、お客様としても事業の将来に関して、強い危機感と課題感をお持ちになっていました。『新規ビジネスの創出』ならびに『新聞販売店のコスト削減』という両面からのコンサルティング施策を検討していた中で、コスト削減策の一環として、新聞配達店の問い合わせ対応を自動化するシステムの構築を提案しました。
従来から、新聞の未配達や誤配達が発生した際の問い合わせに対する個別対応が大きなコスト要因となっていましたが、これを簡易的なコンタクトセンターで代替するべく、私がAWS Summitで目にしたAmazon Connectを活用したいと考えました。同時にAWSへの打診を経由して、技術支援のパートナーとしてNHN テコラスを紹介されました」(谷藤様)

この時点ですでにAmazon Connectを中心としたアーキテクチャのベースは固まっていましたが、サービス単位での接続にあたり必要となる細かな設定やチューニング作業が難航しており、NHN テコラスによるサポートのもとプロジェクトが進行することになりました。
システムの設計・構築から実装まで、プロジェクトはどのように推移したのでしょうか?
「当初は、有人対応とAIチャットボットのハイブリットでコンタクトセンターを構築する構想でした。しかし、AIチャットボットで完全に無人化しないとコスト効果が出にくい一方、新聞購読者のお客様の層を考えると自動応答に対してネガティブな反応もあるのではという懸念もありました。AIの精度面での懸念を解消するべく、現時点で実装できる技術と近い将来実装が可能になるであろう技術を含めて、NHN テコラスからアドバイスを受けた結果、AIチャットボットによる完全に無人の仕組みを実装することに決めました。
NHN テコラスには初期の環境構築フェーズから一歩一歩伴走いただき、電話番号の取得やIAMロール設定、顧客DBの情報取得などで、手厚い支援を受けられました。策定したシステム設計書とシナリオにそってコンタクトセンターの開発を進行し、テストと修正を繰り返しながら全体を構築していきました」(谷藤様)
設計されたシステムの概要としては、以下のようなものでした。
まず電話問い合わせが発生した際に、Amazon Connectを介して問い合わせを受け付けます。発話内容はAmazon Lexでテキスト化され、問い合わせの内容をAWS Lambdaで定義した顧客データのマッピング機能を通じて処理した後、結果を加工済みデータとしてふたたびAmazon Lexから回答として返却します。この際、名前や住所情報などのデータはAmazon BedrockのClaudeにより整形・加工するフローを組み込みました。
また、録音データはAmazon S3に保存され、内容に応じてエスカレーションが必要になる問い合わせのみ、Amazon SNSで通知する機能も実装しました。この際に、Amazon Transcribeで文字に起こしたテキストデータをもとに、Amazon Comprehendを使って話者の感情を分析することで、緊急性の高い問い合わせを振り分けられるようにしています。

「問い合わせの内容はポジティブなケースもあればネガティブなケースもありますが、通知する際の件名にそれぞれの表情をあらわす絵文字をつけるギミックを追加して、お客様にはとてもよろこんでいただきました。
基本的な設計は私が進行しつつ、NHN テコラスのエンジニアからサンプルコードの提供を受けるなどして、技術観点でのフィジビリティを事前に検証することができました。生成AI(Amazon Bedrock / Claude)は問い合わせの発話内容を通知する際に適宜要約する目的や、顧客データベースの整備・正規化の検証に利用しました」(谷藤様)
本プロジェクトには、オルタナティブで就業するインターン生の古野様も参画されました。システム開発未経験の状態でのスタートでしたが、大きな知見を得ることができたといいます。


「AWSを使った開発もAI開発も初めてという状態でのスタートだったので、ハードルの高さを感じていましたが、顧客課題を解決するため、AIを使った音声認識や問い合わせ処理の精度を最大限に高めることをテーマに取り組みました。
Amazon Bedrockによる日本語処理の結果については、全体的によく加工されていると感じましたが、指示の仕方によっては住所の番号が消えてしまうなど、予期しない変換が発生することがあるため、明確なルールにもとづいたプロンプトを設計することが重要であると感じました。また、生成AIは急成長しているものの、まだ発展途上の部分も存在すると思います。精度を高めるためにはしっかりとした学習が必要であり、それには一定の時間が必要になることも実感しました」(古野様)
NHN テコラスの支援について、印象に残っている部分があれば教えてください
「本番リリースの1ヶ月前には、ユーザーテストを実施して、現場からのフィードバックをもとに改善を加えました。この際、システムで実現できる価値と構築に必要な工数、技術面での可否といった要素に関して、常にバランスを考慮して変更していきました。
NHN テコラスからは、チャットボットの回答スピード改善や、聞き取りや対話の精度改善において、深く議論を重ねたり、丁寧なアドバイスをいただくことができました。またAWSのサービスは選択肢が多いので、何が最適か教えていただけたのも非常に良かったです。
都度発生する課題を、NHN テコラスのアドバイスを参考に短時間で解決できたことで、トータルでおよそ1ヶ月の工数削減につながったと思います。そこで生まれた時間を、開発のブラッシュアップに充当することで、システムのクオリティを高めることにもつながりました」(谷藤様)
「NHN テコラスに相談することで、開発の進捗が大きく加速するシーンが多くありました。特に、AIの精度を向上させるという課題に関しては、具体的なアドバイスをいただくことで、スムーズに開発を進めることができました。
開発の初期段階では私から相談する頻度はあまり高くなかったのですが、フェーズが進むにつれて技術的な課題が増え、NHN テコラスへの相談回数が増えていきました。的確な回答を受けることで、チーム内で試行錯誤するコストが減り、より効率的にシステム構築を進めることが可能になったと思います。
漢字の読み取りと加工をAmazon Bedrockで実行する処理の構築を担当したのですが、珍しい人名や難読地名、あるいは『道新』『日経』といった媒体の略称をうまく読み込めないケースがあり、調整作業が難航していたところ、NHN テコラスからルール設定の方法について具体的なアドバイスがあり、これを取り入れて進めることができました」(古野様)
システム導入によりどのような成果につながったのでしょうか?
このシステムを導入したことにより、従来は販売店スタッフが応対していた電話問い合わせを、無人の状態でも対応することが可能になりました。新聞販売店の業務オペレーション効率化により、人件費を含めたTCOはおよそ35%削減されたといいます。
「新聞販売店の現場でとりわけ大きな負担として存在していた『早朝の電話番』が不要になりました。実際に出来上がったシステムの仕様についても喜んでいただき、システムのローンチ以降トラブルもなく、問題なく本番稼働している点も高く評価していただくことができました」(谷藤様)
最後に、今後のAWSを活用した構想についても教えてください
今後の計画としては、新聞販売店の顧客応対記録や顧客情報をAWSクラウド上に集約し、リアルタイムでの意思決定支援や、AIを活用した予測分析など、より高度なデータ活用戦略を展開していく方針とのことです。
「本プロジェクト以外では、自社サービスの開発を検討しており、引き続きAWS活用を考えています。また、当社ではITコンサルティング、システム開発、研修の3つがそろって初めてデジタル活用を支援できると考えています。とくにシステム開発に着手する前のコンサルティングを重要視することで、実際の開発フェーズまでブレることなく推進、実現できます。AWSやその他の最新技術を組み合わせて提供し、企業の成長を支援していきます」(谷藤様)
「インターン生として参加し、コードやITに関する知識が十分ではない立場でしたが、ベンダーを交えたプロジェクトを通じて、システムの本番リリースまで無事に進められたことは大きな自信になりました。NHN テコラスからは、AWSに関する疑問点や技術的な課題にアドバイスをもらうことができ、定例ミーティングでも理解できるまで丁寧に説明してもらえたので、専門知識が不足している立場でも安心して開発に取り組めました。今後、新たな開発プロジェクトに取り組んでいく際にも、より良い形で技術支援をお願いできればと考えています」(古野様)
NHN テコラスでは、今後もAWSサービスや生成AIを活用したシステム構築、運用を支援してまいります。
公開日:2025年5月8日
導入サービス
オルタナティブについて
IT顧問、システム開発、人材・研修の領域からIT活用支援を展開しています。(取材時点では団体としての登録。2025年5月に法人化を予定)

- 社名
- オルタナティブ
- 内容
- IT顧問、システム開発、IT人材・研修
- 設立
- 2022年11月
- 従業員数
- 4名(2025年4月時点)